常盤平幼稚園

今日の一冊

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子どもたちと絵本

この園の子どもたちの生活は、絵本なくしては始まりません。
朝、みんなが集まれば絵本。帰りのさようならの前に絵本。
そして、週に1回、クラスごとに入る図書館では、 図書館の専任が、その季節や、クラスの子どもたちに合わせて、 今、出会わせたい絵本を選んで、子どもたちに読んでいます。

1日に2冊以上、1週間で10冊以上、1か月で平均50冊、1年にしたら、何百冊・・・
卒業までの3年だと・・・。
もちろん、読んだ本の数ではありません。
ただ、子どもたちは、幼稚園の3年間の生活の中で、 こんなにもたくさんの絵本に出会っているのです。
その、毎日の積み重ねの大きさを感じて頂ければ。

このブログでは、そんな日々の子どもたちと絵本との関わり、 様子、楽しんでいる絵本など、ご紹介していきます。

およぐ

2023年07月24日

来週からプール・・・の3歳のクラスつきぐみさんのとしょかんの一冊。

およぐ

oyogu
なかの ひろたか さく かがくのとも113号
1978年8月1日福音館書店刊

いぬもねこもたくさんのどうぶつ みんないぬかきおよぎ
でもなんでおよげるのだろう・・・。それはからがみずにうくからだ・・・と始まるのですが、
先ず水になれることから・・・。
” かおをみずにつけてみよう。 ”
” つぎはみずのかけっこをしよう ”
ユーモアいっぱいのイラストにつられて最初は少し不安気にみていた方たちもどんどんおよげるような気持ちになったのか、この絵本をよんだあと、自信いっぱいとしょかんをあとにしました。

いたずらおばけ

2023年07月21日

次は6月の終り 5歳のクラスうみぐみさんのとしょかんの一冊。

いたずらおばけ

itazuraobake
イギリス民話
瀬田 貞二 再話 和田 義三 画
1978年2月 こどものとも刊
2005年2月 特製版 福音館書店

むかしとても貧乏でしたがほがらかなおばあさんが道でつぼをみつけると、中に金貨がぎっしり。
運ぶうち夢がふくらみます。

ところが振り返るといつの間にやら金のつぼは銀の塊となっていました。
今度は銀の塊をどう使おうかと思案して振り向くや何と!!てつころがあるばかり・・・。

” この方が幸せ 小銭に変えられる・・・ ”
と歩くうち、てつころは石に変っていて、
” よかった。きどをとめるいしがほしかったところ・・・ ”
と結んだショールをほどこうとした途端、
” ぎゃあ ”
といっていしはとびあがり、ぴょんぴょんはねたり、きーきーいったり、けらけらわらっていたずらぼうずのようにあばれてにげていきました。

おばあさんはそれをみて、笑い出し、” なんてしあわせなんだろう いたずらおばけをこのめでみられるなんて ” とくすくす笑って、ひとばんすごしましたとさ。

最初に題名を伝えたときから、どんなおばけが出るのか・・・心待ちにしていたうみぐみさん、おばけが去っていく姿ににんまりでした。

わたし

2023年07月21日

次は5歳のクラス うめぐみさんと6月のとしょかんでの一冊です。

わたし

watashi
谷川 俊太郎 ぶん 長 新太 え
1976年10月かがくのとも刊
1981年9月かがくのとも傑作集 福音館書店

わたし おとこのこからみるとおんなのこ
あかちゃんからみるとおねえちゃん
おにいちゃんからみるといもうと
おかあさんからみるとむすめのみちこ
おとうさんからみてもむすめのみちこ
おばあちゃんから、おじさんから、おともだちから・・・と続き、
となりのおばさん、いぬのごろう、きりん、あり、うちゅうじんと延々と続きます。

うめぐみさんは耳から入ることばと長新太さんのユーモアいっぱいの絵とを結びつけながら「うん うん・・・」とうなずきながら楽しんでいる様子。

「わたし」という個人と周囲との関係を考えるのもひとつの科学なんだ・・・と改めて考えさせられた一冊です。

一度出会ってみて下さい。

みんなうんち

2023年07月21日

次は6月の3歳のクラスつきぐみさんのとしょかんでの一冊です。

みんなうんち

minnaunnchi
五味 太郎 さく
1981年2月2日
かがくのとも傑作集ライブラリー版

つきぐみさんに題名をよんだだけで皆大笑い。・・・
さかなもうんち とりもうんち むしもうんち
いろんなどうぶつ いろんなうんち いろんなかたち
いろんないろ いろんなにおい・・・と耳からことばが入っていくと同時にいろんなどうぶつのおしり
オンパレードの下にはいろんなうんちが勢ぞろい。
” へびのおしりはどこ? ”
” くじらのうんちはどんなの? ”
の問いには ” ここ ” とか ” あそこ ” とかあちらこちらからたくさんの声があがります。

ページいっぱいにちらばるうさぎの ” あちらこちらでうんち ” には ” ひゃあー ” の悲鳴が・・・。
子どもはそもそも、自分のうんちにはとても愛着をもっていますが最後は ” いきものはたべるからみんなうんちをするんだね ” のひとことに ” うんうん ” とうなずき、とても楽しんだ一冊でした。

かがくのとも傑作集として海外にも拡く親しまれている・・・と聞きます。ご家庭でも楽しんでみて下さい。

よかったね ネッドくん

2023年07月21日

次は5月の終り、4歳のクラスうめぐみさんのとしょかんの一冊。

よかったね ネッドくん

yokattanenedokun
チャーリップ ぶん・え
やぎた よりこ やく
1969年8月偕成社刊(世界の新しい絵本)

ある日ネッドくんに「びっくりパーティにいらっしゃい。」というてがみがきた。ところがパーティ先は遠い遠い田舎だった。

” よかった!! ”
” ともだち、ひこうきかしてくれて ”
” でもたいへん ひこうきがとちゅうでばくはつ ”
” よかった ひこうきにパラシュートがあって ”
・・・と幸運と悪運を繰り返すネッドくん。

その度にうめぐみのなかまは深刻になったり、ほっと胸をなでおろしたり・・・とハラハラドキドキと読みすすむうち、想像が先廻りして ” でもたいへん ” というと、
” あ!!わかった こうしてああしてたすかるんだよ・・・ ”
等つぶやきが聞こえてきたりします。
” えーっ ”
” よかった!! ”
と繰り返し、最後、幸運にも顔を出したところは・・・
ネッド君の誕生日を祝うパーティ会場だった。めでたしめでたし。誕生日ケーキのローソクの数は11本。ネッド君は11才になったのでした。
この絵本は子どもの図書館で大人気の絵本でかなりの貫禄。1964年にアメリカで出版されるや子どもたちの爆発的な人気をよんだ・・・と解説にあります。

わらのうし

2023年07月21日

5歳のクラスうみぐみさんと5月のとしょかんで読んだ一冊

ウクライナの昔話
わらのうし

waranoushi
内田 莉沙子 文 
ワレンチン ゴルディチューク 絵
1998年9月15日 福音館書店刊

あるところにとても貧乏でさび止めのタール作りと糸紡ぎでなんとか暮しを立てているおじいさんとおばあさんがいました。

おばあさんがおじいさんに「わらでうしをつくって、よこっぱらにタールをぬっとくれ」とたのみます。

思惑通り、タール欲しさに出くわしたくま、おおかみ、きつねが見事タールにくっついてしまい、次、次と穴倉に放り込まれます。

その前でおじいさんはナイフを磨ぎながらひとりごと・・・。

「くまのけがわがとれりゃ・・・あったかなぼうしが・・・」
「おおかみのけがわでぼうしを・・・」
「きつねのけがわでえりまきを・・・」
と、となえるや
” ぎょっ ” と驚く三匹は ” 逃してくれたらこんな贈物を・・・ ” と必死の駆け引きの後やっと逃してもらいます。

そして約束通りたくさんの贈物が届き、二人は幸せに暮した・・・ということです。

うみぐみさんは穴倉の動物たちを尻目におじいさんがナイフ研ぎをする・・・というリアルな場面に ” ぎょっ ” と驚き、三匹の運命に悲愴感いっぱい案じていただけに幸せに終る結末にほっと安堵している様子でした。

ウクライナの民族色が色濃く出ている大型の絵本ですが、今は絶版です。・・・とても残念。

かさ かしてあげる

2023年07月20日

〜1学期を終えて〜
春、新緑の美しい季節から、緑濃い夏へと季節が移ろう中、毎日、外庭はどろんこ、砂遊び、虫さがしや鬼ごっこ等々、大賑わい。子どものとしょかんでも「どろんこ」「みず」(長谷川摂子 文/英伸三 写真 福音館)や「どろだんご」(たなか よしゆき 文/のさか ゆうさく 絵 福音館書店)等、絵本の中でそのまま追体験して楽しむ日々でした。
一学期、子どもたちと楽しんだ絵本の中から数冊ご紹介します。
まず3才のクラス、つきぐみさんの6月、梅雨に入ったばかりのとしょかんの一冊。

かさ かしてあげる

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こいで やすこ さく
1996年6月1日 年少版 こどものとも
2002年4月 福音館の幼児絵本第一刷

ポツリ、ポツリ、大きな雨つぶが・・・。
” かさがないの こまったな ” と八つ手の木の下で雨やどりするなっちゃんに、 ” かさかしてあげる ” とアリさんはクローバーの葉を・・・
ふきの葉っぱをかえるさんが・・・うさぎさんは葉つきにんじん・・・
たぬきさんはさといもの葉っぱを・・・くまさんは大きな大きなはすの葉を・・・。
” くまさんのかさはおおきくておもい ” と歩きかねている丁度その時、イヌのジョンが届けてくれたのはなっちゃんの赤いかさ。
あめのひはかさのぎょうれつ。かさのないこ、いませんか?
つきぐみさんは、それぞれちがった葉っぱをもって登場するやさしいいきものたちに親しさいっぱいの面持で見入っていました。とても楽しんだ一冊でした。

おじさんのつえ

2023年04月07日

お正月開け、雪の予報もあり、少し期待しましたが、残念ながら銀世界は夢となりました。でも子どものとしょかんには、冬ならではの、雪や氷にまつわる本も並び、むらづくりに励む日々の中、大好きな本、よみたかった本をクラスのなかまと思いっきり楽しみました。その中の何冊かをご紹介します。

先ずは3学期のトップバッター 3歳のクラス、つきぐみさんのとしょかんの一冊。

おじさんのつえ
ojisannotue
五味太郎 作・絵
1977年8月10日
第一刷 岩崎書店刊

長マントに帽子姿のおじさんが、ぴんくとおれんじまざりのながいものをつかって、次から次へと楽しんでいるのをみて、小さな男の子は
”ねえ、おじさん、それなあに つえなの?”
”でんわなの?”
”ケーブルカーなの?”
”すいどうなの?”
と聞きまくる・・・がおじさんは答えず、笛を吹いたり、花火をあげたり、星空をみたりしたあげく、飄々つえをついて姿を消す。
つきぐみさんは次から次へと魅力いっぱいの世界を展開するおじさんを只々追いながら、存分に楽しんだのでした。
五味太郎さんらしい美しい色彩とユーモアあふれる絵本です。

さるのオズワルド

2023年04月07日

次は、1月、5歳のクラスうみぐみさんのとしょかんの一冊です。

さるのオズワルド
saru
エゴン・マチーセン作
松岡享子訳
1998年3月第1刷 1999年6月第5刷
こぐま社刊

あるところに、いっぴきのちっちゃなつるがいてー
「おっとまちがい」さるがいて、
なまえをオズワルドといった。
・・・に始まるこの絵本、<おっとまちがい>の繰り返し。
その度にうみぐみさんは「えっ!また・・・」と大笑い。

一見、平和そうなオズワルドの住むさる社会。
ところがそこへボスざるのいかけやーーおっとまちがい、いばりや・・・
でっかくて、らんぼうで、みんなをけらいにしていばりちらしているいやなやつ・・・があらわれる。

さるたちはたかいえだに逃げブルブルふるえ、のみとりやまくらにさせられる毎日・・・
ところがある日、オズワルドがさけんだ
「いやだ!」
すると他のさるたちみんな「いやだ」「いやだ」「いやだ」「いやだ」の連発。

いばりやは「ウォーッ」ってうなったものの ひとりぼっち。そして決心して、いう。
「もうこれからはじぶんでなんでもするから、おりてきてくれよう・・・」と。
「いいよ、わかった」と平和が訪れ、「リンゴパーティー」をひらくが一番大きなリンゴはオズワルドがもらった。
いばりやの回心はオズワルドのおかげだったから・・・。

この絵本に出会ったこどもたちは、「ギャハハハ・・・」と大笑いして終ったあと ”かりてく!” と必ずいう。今回もしかり・・・。

エゴン・マチーセンは「あおい目のこねこ」で出会った作家。
デンマークの代表的絵本作家で絵本に関して、常に画家の目で見た「芸術的質」を大切にし、又「本が子どもに真実として受けとめられるためには、(本)の全体が作者にとって深い真実でなければならない」と説き真摯な姿勢で絵本を作り続けた・・・と著者紹介にあります。
とても楽しんだ一冊でした。

かんちがい

2023年04月01日

2月の初めにうみぐみさんとよみ始めた動物シリーズ。
2月の末日、シリーズの<5>を読みました。

かんちがい

kanchigai
吉田遠志 絵と文
1984年4月 初版発行
福武書店刊

アフリカサバンナの動物シリーズ5冊目は共に赤ちゃんを抱えたお母さん同志の間で起こったお話です。

ページを開くと、赤ちゃんを連れたサイのお母さんの横腹の大きな傷が目にとびこみます。いったい何が起こったのでしょう・・・?

サイの親子がおいしい草を求め、少し離れた森の側で草を食べ始めていると、森の中から赤ちゃん象がサイの赤ちゃんを仲間とかんちがいして近づいてきて二ひきはお互い相手を確かめ合っているのをみたサイのお母さんがこどもがいじめらているとかんちがいして走ってきたところに・・・

やはりこどもを心配した象のお母さんがサイのお母さんの脇腹を角で突いてしまいます。傷ついたサイのお母さんはどうなったでしょう・・・?

幸運にも翌朝だいぶ元気を取り戻したサイのお母さんの脇腹の傷を4羽のサイドリがきれいにしています。
アブやダニを食べて悪い病気からまもっていました。

3学期、この動物シリーズを読み始めてから、うみぐみさんはとしょかんに入る度に先ずこのシリーズの続きを・・・とたくさんの方の熱い期待の合唱。
それ位、この動物絵本は生命力にあふれ、野性そのものを感じさせてくれる他に類を見ない傑作です。

「絵本・物語るよろこび」(松居 直著 1990.9刊・福武書店刊発行)で吉田遠志さんを松居直先生は
「・・・動物を描いた画家、描ける画家は世界に数多くいるにちがいありませんが、こうした眼と腕で野性を物語をとおして描ける画家は決して多くはありますまい。吉田さんの絵本には、西洋的なものとちがう自然観、あるいは哲学のようなものが感じられます。まさに日本人の眼と感性がとらえた”野性のアフリカ”です。」と語られ「アニマ」107号の吉田さんの記事を紹介されています。

野生動物の世界には魅力がある。野生の法則には、金銭的な欲の争い、大量殺人の戦争がなく、異なった動物たちが思いのほか、平和に生活している。種類が違っても草食動物の群れが一緒に草を食べていることもある。
肉食動物は草食動物を食べるが、満腹しているライオンなどは見える所にいる動物でもとらない。草食動物は繁殖力が強いから自分たちの食物がなくならないためには数を制限する事が必要で、肉食動物とバランスをとっている。人間は家畜を食べるために皆殺しにするが、肉食動物は狩りをしても逃げられるものにはその機会を残している。無意味な殺生はしない。毛皮や牙をとったり、スポーツと称したりして動物を絶滅させてはいない。どちらが悪いかは明白である。犬を飼った人なら誰でも知っているように、仲間を裏切らない。こう考えて私は動物を愛し、その画を描いているから、「食うか食われるか」というような闘争の光景は描かない。うまく逃げられたり、群れを護ろうとするような光景ならば描いても良いなと思う。いくらでも素晴らしい題材がある。

上記の文章を紹介された後、松居先生は「動物や自然を愛する心は、幼い時から養われねばならない」という吉田遠志さんの心を、この絵本は幼い人々に伝えるでしょう。とあります。今後もこの動物シリーズは、大切によみ継がれていくことでしょう。

この一年を通してしみじみ感じたことは、つきぐみさん、うめぐみさん、うみぐみさんのどのクラスも一人のこらずの方たちがとてもとてもことばが大好き、絵本が大好きでとしょかんに入る度に”凄い”と感心しきりです。このことばの力はこれから生きていく子どもたちをしっかりと支えてくれることでしょう。

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