ぽとんぽとんはなんのおと
2月終り、あちらこちらから春の気配がしてきた日に
うめぐみさんのとしょかんでよんだ一冊
1980年2月1日福音刊書店より
野原に山に雪に降り積り、冬ごもりの穴の中、くまの母さんは双子のぼうやを産みました。ぼうやはおっぱいのんではくうくうねむって大きくなりました。
ある日ぼうやは「かーんかーんっておとがするよ。かーんかーんってなんのおと?」するとかあさんがこたえました。「きこりがきをきるおとでしょう。とおいもりからひびいてくるの。
でもだいじょうぶ。きこりはここまでこないから。ぼうやはゆっくりおやすみね」「ほっほう ほっほう」「つっぴぃつっぴぃ」「どどーっどどーっ」冬ごもりの穴の中に聞えてくるふくろうの声やひがらの声、なだれの音、その度に”なんの音?”とたずねるこぐまに母さんぐまは安心出来るよう優しく答えます。
話を聞いているうめぐみさんもさかんに”ふくろうだよ””ことりだ”等、何の音かに想像をめぐらしていましたが「ぽとんぽとんってなんのおと」を読んだ瞬間、”つらら!つらら!”と声が返ってきました。
ページを開くと見開きいっぱい穴ぐらから見る銀世界、その入口の大きなつららから雫が落ちているのでした。
春風が運んだ春の匂いに誘われ穴ぐらから出ていく親子のくまを待っていたのは、可憐なかたくりの花でした。
この絵本は冬から春へと向かう雪国の風情、空の色、陽のひかり、全てを感じさせ、そんな自然を懐にして愛情いっぱい穴ぐらの中で子育てする母さんぐまに身も心も委ねきったこぐまの幸せを詩情豊かに語ります。是非出会ってみて下さい。