せかいいち うつくしい ぼくの村

さて最後は7月の最初のとしょかんの一冊です。

せかいいち うつくしい ぼくの村

絵本の画像「せかいいち うつくしい ぼくの村」
小林豊 さく・え
ポプラ社刊
1995年12月第一刷 2001年12月第七刷

このお話の舞台はアフガニスタンのパグマン村、春にはすもも、なし、さくらんぼ、あんずの花で満開。
なついよいよ収穫です。

主人公ヤモはせんそうにいっている兄さんの替わりにロバのポンバーに荷を積み、お父さんと町へくだものを売りに出かけます。

町はとてもにぎやかでお父さんと離れたヤモの胸はドキドキです。
最初は売れなかったサクランボはそのうちとぶように売れます。

「パグマンのちかくでくだものをつくってたんだ。なつかしいな。」と買ってくれたおじさんは戦争で片足をなくしていました。
ヤモはにいさんの顔を思い浮べます。
チャイハナ(食堂)で大人の会話を聞きながらヤモは戦争にいっている兄さんのことが気にかかります。

そんなヤモにとうさんはヤモへのごほうびに
“ あとでびっくりすることがあるよ ” といって、
ひつじの市場で売り上げ全部を使って小羊を一とうかったのです。

家路へ向かうヤモの誇らしげな様子・・・。
「ハルーンにいさん、はやくかえっておいでよ。うちのかぞくがふえたんだよ。」・・・。

はるはまだまだ1ねんちかくもさきです。

このとしのふゆ、村はせんそうではかいされ、いまはもうありません。

この最後のページを読んだとき、シーン、と瞬間沈黙がありました。
子どもたちの胸の中に去来したのはどんな風景だったのでしょう・・・。

作者小林豊さんは
「報道では決して知ることのできないその国の人々の暮しや風景、人の温かさ、全て、その国へいって初めて知るのです。
先ず、私たちは知ることから始めなければなりません。
私は見た通り書きました。
こどもという目は確かなので、こどもといっしょにこの本を見て共感して欲しい」
・・・と。

絵がとても美しく、戦争の悲惨さを一切語っていませんが、心から平和を願っている心情にあふれています。出会っていただけたら嬉しいです。

今年一月に亡くなられた松岡享子先生は
「絵本は平和への道」(母の友の連載)で
『アフガニスタンを舞台にした小林豊の絵本「せいかいいちうつくしいぼくの村」「ぼくの村にサーカスがきた」はニュースで見聞きするのとは違うこの国を見せてくれます。
子どもの本は平和への道です。
子どもたちが絵本の主人公とともに冒険をたのしみながら、物語の背景になっている土地や暮らしを親しいものと感じ、感覚と記憶の中に “ ともだち ” と “ ふるさと ” をたくさんもって “ 違い ” の向こうにある “ 同じ ” を知って大きくなること。
そこに私たちの希望がかかっています・・・』
と語って下さっています。