おっきょちゃんとかっぱ
次は7月の4歳のクラス うめぐみさんのとしょかんの一冊です。
おっきょちゃんとかっぱ
長谷川摂子 文 降矢奈々 絵
1994年9月1日こどものとも 福音館書店刊
小さな女の子、おっきょちゃんが川で遊んでいると川の中からかっぱの子ガータロが出てきてまつりに誘う。
おっきょちゃんはきものに着替え、きゅうりを土産にガータロに連れられ水底の世界へと入り、まつりを楽しんでいると、大人のカッパたちに ” にんげんのこだ " と囲まれてしまうが土産のきゅうりのおかげでたちまち客人となる。
おっきょちゃんはまつりの餅をひと口食べたら、お父さんのことをわすれ、ふた口食べたらおかあさんのことをわすれ、みくち食べたら水の外のことを全部忘れ、ガータロの家の子になって遊んだ。
あるひのこと、おっきょちゃんが手にした布人形はかあさんが作ってくれた人形だった。記憶を甦らせたおっきょちゃんは ” かあさんところへかえりたい ” といって初めて泣いた。
ちえのすいこさまとガータロの知恵をかり、無事おっきょちゃんは人間の世界へと戻ります。うめさんはかっぱという現実にはまだ会ったことがない生きものや水底のまつりなど、どんどん異世界へと連れ込まれ、おっきょちゃんがもちをひとくち食べるごとにお父さんのこと、お母さんのこと、水の外の世界のこと、全部忘れていく語りにはさすがに深刻な表情となり、おっきょちゃんの行末を心から心配している様子が伝わってきました。
それにしても異次元の世界へとさっと誘ってくれ、又、現実へと戻してくれる、その過程の面白さと見事さにいつも感心させられます。作者長谷川摂子さん(この世にはいらっしゃいませんが)と画家の降矢奈々さんにこんなに素晴らしい作品を創ってくださったことに感謝です。