鹿よ おれの兄弟よ
卒業間近の5歳のクラス、うみぐみの最後のとしょかんで読んだ一冊。
鹿よ おれの兄弟よ
神沢利子作
G・D・バブリーシン絵
2004年1月20日福音館書店刊
二年間、三年間の園生活の中で虫や花や木やサケの卵等々、たくさんの命と向き合ってきたうみぐみさんにふさわしい一冊です。
シベリアの森でうまれたおれは猟師だ。おれのきるふくは鹿皮、おれのはくくつも鹿皮だ。
どちらも鹿の足の腱を糸にしてぬったものだ。
おれは鹿の肉をくう。それはおれの血、おれの肉となる。
だからおれは鹿だ。
主人公、おれは目を奪われるような美しく紅葉したシベリアの森に流れる川を鹿を求めてのぼる中、幼い日の回想にひたる。
じいさまに抱かれていたおれは今、妻と子を養っている。
そして鹿の気配・・・
息をのみ、みとれ、銃をはなつ、”ドーン”・・・鹿はたおれたよつ足を、天にむけて。
おお、おれの兄弟、この森でうまれそだったりっぱな鹿よ。
おれはひざまづき、小刀で毛皮をはぐ。
おまえのきていたコートをぬがせる。
いっぽんの骨もおらずに解体する。
ありがとう、おれの友、おれの兄弟、おまえを小舟にのせ、わが家へかえることにしよう。
命をもらう、ということへの敬虔さを深く考えさせられる絵本です。
うみぐみさんと共有できてとても幸福でした。
下記の文章は、この絵本が出版された直後、朝日新聞に掲載された記事です。