ーはじまりー

幼稚園で一番大きいクラスになったうみ組の子どもたち。
「やさしくて、かっこいいうみぐみさんになりたい!」
と言っていた子どもたちは、青色のエプロンを着て、入園したばかりの小さい方たちのお世話をしに行ったり、困っている方のそばに寄り添ったりする姿も見られた4月。

こどもの日を創る生活が始まり、
「こいのぼりつくろう!」と、こいのぼりにする ”雲竜紙” という和紙を見せると、

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「うわー、おおきい!」
「つるつるしてるね!」
「ぼこぼこもあるよ!」

「このかみって、なにからできているのかな?」

「きのこなをあつめたらできるんだよ。」
「はっぱだよ!」
「かみはしろいから、わたしはたんぽぽのわたげだとおもうなぁ。」
「えんそくいったときにいろいろあつめてつくってみよう。」「いいねー!!」

一人の仲間の声がきっかけとなって、その日から紙づくりに挑戦してみることにしました。

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ー紙づくりの生活ー

遠足に出かけた公園で、自分の考える ”紙だと思うもの” を見つけて、ビニール袋に詰め込み、その次の日から、紙づくりが始まりました。

「つぶして、こなごなにしてみよう!」
「みずもいれてみよう!」
「いいねぇー」
「こむぎことみずをまぜてかまらせたら、かみができるとおもうよ。」

試行錯誤してみましたが、結果は・・・

「ただのばらばらのはっぱだ・・・」
「これじゃ、じもかけないよ」
「もういっかいみずでかためたら、できるのかなぁ」
「またおなじことになるよ。」

こどもたちも納得のいくものではなかったようで、遠足行くたびに、「これならできるかも?」と、追究する姿が見られました。

子どもたちのその物事にまっすぐに突き進むひたむきさには、日々驚かされることばかりです。

もし私たち大人がすぐに答えに導き出せばきっとこどもたちの知りたい、やってみたいという気持ちは失われてしまっていたことでしょう。

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ー1冊の絵本との出会いー

日を追うごとにどうすれば紙ができるのか、お家で調べて紙に書いて持ってきてくれる方や図鑑を持ってきてくれる方がいました。

そんなある日のこと、一冊の絵本に子どもたちと出会いました。

図7『やぎのはかせのだいはつめい』(福音館書店 こどものとも)

この絵本の中に、こんな一幕がありました。


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図3

「わたしたちがつくりたいかみだ!」
「きのせんいっていってたね。」
「それずかんにのってたよ!」
「こうぞっていうきだと つよいかみができるんだって」
「〇〇ちゃんがしらべてくれたつくりかたにもかいてあったね」「ねりってなんだ?」

今まで追求し、調べてきたことをすり合わせるかのように子どもたちの言葉が重なっていました。こうして図鑑や作り方の書いた紙を一緒に見てみると紙づくりに必要なものは3つあることが分かりました

・きのせんい(こうぞ)

・ねり

・みず

「こうぞってくわかのきなんだね」
「こうぞ ようちえんのちかくにあるのしってる!」

クラスの中で「虫博士」と言われている男の方がどんなことでも知っていて4歳のうめぐみの時に幼稚園近くの楮の木の実を食べたお話を聞きました。

「ねりってなんだろう」
「とろろあおいっていうのからとれるって!」
「ずかんのしゃしんみるととろとろしてるね」

とろとろしているものが他にないかみんなで考えてみると・・・
「とろろとか?」
「シチューもとろとろ!」
「なまくりーむとか?」
「なっとうおうちにあるからもってくる!」
「みどりいろで、かくかくしてて、なかにまるいつぶがあるやさいも とろとろしているよ」
「なめこも」
「おこめ、つぶしたらとろ~んってするよ。」

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ーねり作りー

その翌日から、ねり作りが始まりました。

お家から持ってきてくれた野菜などを一つずつ布に入れて絞ったり、おくらは茹でて刻んですり鉢ですったり、子どもたちの思うように試してみました。

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図4

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合計6つの ねりを作った子どもたち。一つずつすくってみると、、、

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「うわ~すごいなっとうねばねばー」

なめこはあんまりだね」

「お!いまのところなめたけがいちばんだね」

ごはんはとろとろじゃなくておみずみたい・・・あれれ?」

やまいもすごいとろとろでいいかも!」

そして、最後におくらをすくってみた時の歓声といったら!!「わあーすごーい!!ねばねばだ~!!!」

時間をかけて研究したからこそ、子どもたちの喜びは大きかったようです。

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ー木枠づくりー

そしてねり作りなどに並行して紙づくりの時に紙を漉く道具も必要なことに気づいた子どもたち。誰に教えてもらおうか考えていると真っ先に挙がったのは、いつも幼稚園のあらゆるものを直してくれる健先生でした。

早速、健先生にお願いをし、教えていただきました。

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はじめての大工仕事だったので、説明をしてくださっている健先生の言葉に子どもたちも真剣なまなざしで聞く姿がありました。

初めてのこぎりやトンカチを使っての作業は、慎重に慎重に大工仕事を行う方、本物の大工さんかのように木を切る方などそれぞれでした。

紙づくりに必要なねりと紙を漉くときに必要な道具が出来、幼稚園の楮を切って朝登園してきた子どもたちに見せているとある方がこんなことを呟きました。

 

・・・こうぞのきも いきているのに きっていいの?

 

まさか子どもの口からこんな言葉が出てくるとは思ってもいませんでした。クラスの仲間にもこのことを共有すると、

「そうだよね、きがかわいそう」

「しんじゃったらなにもできないもんね」

「でも、きだけじゃないよ。おはなにもいのちあるよ。わたしたちにも」

「どんなものにもいのちはあるとおもう」

「きがかわいそうだからかみづくりはしないでおこう」

「え・・・ここまでがんばったのにかみつくらないの?」

「やさしいきもちで たいせつにつかわせてもらうのはどう?」

「ありがとうっていうきもちはどう?」

紙づくりを通してどんなものにも命があるということに気づいたうみぐみさん。

3歳のつきぐみの頃から小さな生き物やお花などの植物に触れてきて身近に自然をかんじているみんなだからこそのやりとりだったように感じます。

日々の日常の中で常に命に向き合うことは難しいことかもしれないけれど、今回自分の命だけでなく他の命があることによって生かされていることを、この仲間で話し合う時間をもてたことはとても大きなことだったように感じます。

一人の発した言葉をクラスのみんなで考えること。
そこから更に自分の想いを言葉にして伝えること。
言葉にしなくても一人一人心の中で考えること。
二年間共に成長をしてきた仲間だからこそ、命という重いお話もみんなで受け止め、話し合うことが出来たのです。